
<レポ>道内屈指のリゾート地・ニセコで進む、持続可能な暮らしづくり「ニセコミライ」

新千歳空港から約2時間。蝦夷富士とも呼ばれる羊蹄山とニセコアンヌプリを望むニセコ町は、長年の住宅不足を解消しようと2018年から新しい街区「ニセコミライ」の計画を開始。これまですでに分譲棟2棟、賃貸棟1棟が完成しました。2025年度は3棟目の分譲棟と2棟目の賃貸棟が完成予定です。
ニセコミライとは 株式会社ニセコまちが開発するモデル地区。2018年にニセコ町が内閣府から「SDGs未来都市」に選定されNISEKO生活・モデル地区構築事業がスタート。2020年には官民出資の株式会社ニセコまちを設立。2023年より1棟目の分譲棟の工事を開始した。高断熱・高気密など高性能な木造集合住宅(分譲・賃貸)を建設し、多様な年齢層の入居者によるコミュニティの形成を目指す。将来人口は400人程度を見込む。

最初に完成した建物が、分譲タイプのモクレニセコA棟(以下、A棟)です。全8戸あり、間取りは2LDKと3LDKの2タイプ。完売しすべて満室となっています。
ニセコミライの住宅は、分譲棟・賃貸棟ともに、真冬の期間も含め基本的にエアコン1台で暖冷房しています。

壁には充填断熱と外張り断熱のダブル断熱を採用。

窓は特許を取得した3重(トリプル)ガラス。ガラス厚をそれぞれ変えることで、防音効果を高めています。
これらにより、ニセコミライに現時点で建っている3棟全室で、Ua値は0.25W/㎡以下、集合住宅として国内最高水準の断熱性能となっています。
エアコン1台で全館空調

A棟内のモデルルームを見学しました。フローリング材はドイツ産のヨーロピアンオークを使用。


セコミライの住宅はオール電化で、冷暖房はエアコン。A棟ではエアコンを設置する玄関をエアコン室とみなし、そこからファンを使って各室につなげて全館空調する仕組み。

入居者からは、「外から帰ってきても室温が一定でラク」「夜中に寒かったり暑かったりで起きることがない」「湿度が一定なので冬に喉がかれることもなく、風邪を引きにくくなった」など、さまざまな感想が届いているそうです。

2025年1月に入居開始となったのが、賃貸棟です。1Kと1LDKの10戸からなり、すぐに満室となりました。
A棟同様、冷暖房はエアコン1台のみ。玄関に風除室を設けず、玄関の上に設置した屋根が雪や雨を防ぎ、玄関を開けるとすぐにリビングに入る間取りです。
町内に長年暮らす80代の女性は自宅の建て替えで賃貸棟に一時入居して「床暖房が入っているのかと思ったほど、室内が暖かい。一戸建てだと湯たんぽを入れても寒くて起きていたのに、今は湯たんぽなしで寝られる」と喜んでいるそうです。

集合駐車場にはEVシェアカーも導入しています。ニセコミライでの車の保有台数を減らす取り組みです。車庫内には電気自動車用の充電スポットもあり、入居者は駐車場の屋根に平置きした太陽光発電が発電している時間であれば無料で充電が可能です。
モクレニセコA棟では春から秋に使う電力量のうち82%を太陽光発電で賄うことができました。残りの18%については、再エネ由来の電力を購入しているため、実質ゼロカーボンを実現しています。
ニセコといえば冬は大雪。除雪やシェアカー予約、LINEグループによる回覧板機能など、管理は(株)ニセコまちが行います。月額管理費は今のところ、賃貸が4400円、分譲が1万円ほどです。
多様な年齢層、家族層が住む、最大400人規模のまちへ

2025年度にはA棟の隣に分譲のモクレニセコB棟(以下、B棟)が完成予定で、すでに全8戸が成約済み。
入居者の町民と移住者の割合を聞いたところ、街区全体で半数近くの世帯がニセコ町内や周辺町村からの住み替え。その他は、分譲棟を中心にニセコで二拠点居住をする人が多いということです。 ニセコミライの住宅に住む際は、ニセコミライのポリシーに同意することが前提となります。
ニセコミライのポリシーでは、計画当初のSDGsの考え方が基になっており、環境(脱炭素社会の実現に向けた行動)、経済(新たな付加価値の創出と資産価値の向上)、社会(コミュニティ活動や活発な住民交流)の3つが軸となります。また、新しく設立されたニセコミライ町内会に参加することを必須とし、積極的な住民参加を求めています。

ニセコミライは将来的に分譲や賃貸、さらには計画中のシェアハウスなどさまざまな間取りの住宅をつくることで、多様な年齢層の世帯が暮らすことを狙っています。
住宅が不足している単身者から子育て世代の悩みを解消し、一軒家では広すぎるようになった高齢世帯の住み替えなど、さまざまなニーズを取り込むことで、活気と住民交流が持続するステキな街を目指しています。

なお、ニセコミライの住宅はすべてが集合住宅を予定しています。
計画は、2030年までに最大400人程度が暮らすまちへと発展させること。今後も分譲・賃貸・シェアハウスなどの建設が予定されています。